旧既存宅地ならまだしも、新宅には絶対に手を出したらいけない

管理人が銀行員時代にあった、市街化調整区域における不動産売買のトラブルについてご紹介します。

 

新宅地の中古住宅を買った老人介護事業者の事例

老人の介護事業を経営している法人が市街化調整区域内の土地付き中古住宅を買いました。購入後は増改築をして、介護事業所にする事が目的でした。売主がいて、それを仲介する不動産業者がいました。購入資金は、地元金融機関が根抵当権を設定して融資をしていました。

 

格安な物件だったので飛びついたのだそうです。購入後、介護事業所としての認定を得る為に早速増改築に取り掛かろうとしましたが、建築確認が下りない事が判明しました。理由は新宅地(市が線引きした後で宅地になっている土地)だったからなのですが、その時に新宅、既存宅という言葉を初めて知ったそうです。おまけに既存の建物が、飲食店をやるという名目で開発許可を受けており、実際には居宅として利用した為、完了検査も受けていないという事まで判明しました。

 

増改築をしないと介護事業所としての認可が下りない為、多額の設備投資をしたにもかかわらず事業がスタートできない事から、契約の白紙撤回を申し出しましたが仲介業者(不動産屋)も売主もそれに応じず裁判となりました。

 

事業がスタートできないと融資の返済もできないため、元金据え置きの延長を金融機関にお願いしました。金融機関は応じてはくれましたが、その代わり、いつまでに事業を開始するようにという期限を設定されてしまいました。

 

買った側からしてみれば、実際に現在建っている建物を買うわけですので、買う時には何か問題があるとは思わなかったと思います。媒介した不動産業者には、リフォームをして介護事業所にすると伝えていたにも関わらず、何にも説明がなかったそうです。

 

そもそも現状の建物は違法物件です。金融機関もしっかり調査をしてから融資を行うべきでした。不動産屋が作った重要事項説明書があれば安心してしまうのかもしれません。但し、事業資金として融資している以上は、計画も聞いていたでしょうし、調整区域なのですからリフォームに開発許可が必要かどうかくらいは市役所に電話一本入れればわかった事です。審査の不手際を棚に上げて、早く事業を開始するようにと言うのはいかがなものかと思います。

 

この様に、旧既存宅の物件ならまだしも、新宅の物件も平気で売られています。不動産屋も知ってか知らずか、ろくな説明もせずに売っているケースが少なくありません。金融機関も都市計画法をしっかり理解しているとは限りません。

 

購入者、不動産屋、金融機関共に知識不足であった事が原因で起こった事例と言えます。

 

ネットに出ていた事例

 

農家住宅として建築基準法の確認をとったものを第三者が購入したケース⇒No.308 市街化調整区域と農家住宅

 

私が銀行員時代に聞いたトラブルは、全て新宅絡みでした。旧既存宅ですらどうかと思うのに、新宅を知らずに手を出したらほぼトラブルになるのではないかと思います。

 

 

 

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